見られない自分の背中、の話。

ほんとはね、全部ウソなのです。


ほんとのこと話しても、
あれもこれもあなたは全部
あたしの思惑とは違うかたちに、
グニャグニャにして飲み込むから、


だから、最初からウソを教えるのです。


そしたら今度は、言葉どおりに受け取るなんて。
あなたはあたしと話してるのではなく、
ひとりで自分の背中をなぞっているだけなのです。


直接は見えないはずの背中を、
鏡に映し出した像で確認しただけで安堵し、
人差し指の腹でくすぐり始めるあなた。


そこに映っている背中は、
あなたの背中ではなく、もしかしたら
あたしの背中かもしれないのに。