ひとりごと

鳥肌が生まれる卵、の話。

あたしがここに記すのは、いつだっていつだって二番目に心を占めていることで。あたしのちっぽけな胸を最も締め付けるのは、まだ言葉にならず、ぞわぞわとうごめく 音にしかならない鳥肌の卵たちなのです。

後悔が伝う歌肌で、の話。

歌われなかった歌が今日 生まれ、こぼされなかった笑顔と一緒に、 潮の香りに包まれながら貝塚の深く奥底で、 これからの1000年が通り過ぎるのを、 ただただ歌肌で感じようと決めたのでした。

ボーダーをストライプに、の話。

スクロールを逆走し、 あなたが持っている全てのボーダー服を ストライプ柄に変えに、今すぐ向かいます。

向こう側なりの完全さ、の話。

あたしの世界は、なんて狭い。 太くも細くもなく、ただただ狭い。 いつも身につける指輪やらピアスやらを 「これ、かわいいね」と初めて目にしたかのごとく、 毎回 丁寧に褒めあげてくれる あなたのその姿の向こう側には。 愛くるしさには、苦しみしかないの…

あたしのシグナル、の話。

あたしは、あたしにとっての本物を見つけた時、 笑顔の代わりに涙をこぼすの。 そして、その涙が温かいことを 頬が確認してようやく あたしの口元は安心していいのだと思い知り ゆっくりと重い口角を上げるのです。

本物の声、の話。

あたしに本物の声があったのなら、 あなたの日常に、あなたの未来に、 どれだけのしわを刻めるのだろうか。

図鑑をポタージュで、の話。

神様になれたよ、あたし。 身体の奥底の泉から こんこんと湧き出るポタージュで、 あたしだけの図鑑と辞書をつくるのです。 編む、のではなく、選ぶのではなく、 創るのです、すべてを すべてを。 *********** そのマントを羽織っている間は、 ちょっと しょ…

好きなのは最後のはじまり、の話。

ねえねえ、聞いて。 そして、覚えていて。 実は真ん中よりもね、 最初と最後が好きなの、あたし。 特に最後のはじまりが大好きで。 最後を始める時の最初の笑顔が あたしのちょっとした特技なの。 でも最後の終わりは いつも分からなくて、 気づくと新しい最…

スパンコールのひざ当て、の話。

その女はひざまずき、 神に祈る真似をするかのように ギターをかき鳴らす。 服装の中で一番こだわるのはひざ当て。 今日は蛍光ピンクのスパンコールが ぎっしりついたものをつけている。 肌見せ・ボディライン・アクセサリー 方程式どおりのエロスは ちっと…

十二単の6枚目、の話。

あたしにとって、 十二単の6枚目が一番大事だとして、 それがあなたにとって何の意味があるのでしょう。 それでも、それがあたしだし。 整形は絶対しないけど、 お化粧がまた少し増えてく矛盾を抱え、 やっぱり あたしは今のあたしで勝負に出ます。

赤い靴は脱がないで、の話。

あなたが去ると出てくるあたしの片鱗が 一緒に踊ろう、溺れようと誘ってくるから。 あたしは赤い靴を脱がないと心に決め 足でステップを踏みながら海へと向かいます。

何だか不当な、の話。

せっかく眠りについたのに そこから追い出され、外の世界で 時間を潰さないといけないなんて 何だか不当な扱いを受けている そんな気がするの。 あたしは ここにいたいのに たまに身体にいたずらをされ 暇をもて余し、手持ちぶさたで 外の世界を旅する時があ…

お早めにどうぞ、の話。

魚のうろこでできたさかずきで 盛大なる乾杯、とひそひそ声の乾杯を 1回ずつ行うと、その晩餐会は始まりました。 さかずきの中は、岩水なのです。 あたしの、あなたへの気持ちがにじみ出る そんな岩を昨日の登山で発見しました。 にじむような、湿っぽいよ…

血色のいい舌も、の話。

ずっと前からあたしのことが好きだったんだ。 あたしのその涙の味も、血色のいい舌も。 よく人の言葉を勘違いする その思い込みの激しさも。 いつから好きだったかって? 最初から最後まで誰にも遭遇しなかった あの大型展覧会に行った日の時点では 確実にあ…

強い女の子、のランキング。

あたしの強い女の子ランキング、発表します。 1位、は 望まれる女の子像とその子には重なりがあるのに それに気づいていない女の子です。 時折 頭上をふわふわ舞う大きなはてなを、 雲のようなチョウチョを飼っています。 2位は、望まれる女の子像と その…

ニットワンピから覗く世界、の話。

ニットワンピースのひとつひとつの目から 覗いて見えたその世界は、 ゆがみもズームもなく、ありのまんま。 何の加工も魔法もかかっていなく、 遠くにも近くにも感じない距離にある。 世界はいつだってすぐそこにそびえたっている。 少し焦げたパンのような…

ヨーグルトをヘアブラシで、の話。

あたしのヨーグルト、は あなたが思っているよりも辛くて。 デザートかおかずかと聞かれたら、 きっと調味料と答えるのだけど。 お気に入りのヘアブラシで 丁寧に引き伸ばしてあげると たちまち全てを静かに沈み込ませる湖となり、 覗き込むとモスクを彩る …

題がないのがふさわしい、の話。

曇りの日が好きなのは、 いつまでも一日の始まりのまま、 時が止まっているように錯覚できるから。 これから、これから、という気持ちだけを持って 何もしないことを許してもらえる気がするから。

ママがもうすぐ帰ってくる、の話。

あたしが「昔ね」と 打ち明け話をするのはパパが多く。 ママはあたしに耳は隠し、 口しか見せてくれないから。 でもパパは男の人だから、 あたしのほんとに言いたいことは きっときっと分からない。

その甘い汁は、の話。

その甘い汁、は それはそれはきらきらしていて。 無意味に、不必要に 輝きに満ちているけれど 間違いなく今この瞬間のあたしが 何よりも一番未来に放り投げたい そんな滴りなのです。 それは遠い昔から息づいている あたしが生まれる前から芽を出している あ…

何も身に着けずに、の話。

作品と向き合った時の気持ちを記すこと。 どういうわけだか、ここにはそぐわないようで。 他の壁には落書きできるのに、 ここにいる間はなかなか書こうとしないようで。 ここに来た時には、 あたしは手ぶらでいたいようです。 ここに来た時は、身軽でいたい…

街中で見つける後ろ姿が、の話。

あたしに、あたしの後ろ姿が見えたとしたら、 そのあたしを追いかけたいと思うでしょうか。

頭の中ががらりと、の話。

ここに来ると、 話す言葉も書く言葉も様変わりする。 直前の直前まで、頭を埋め尽くしていた文字の並びは 全くもって違ったというのに。 そんなふうに一瞬にして、 あたしを取り巻く風のにおいを変えてしまう。 この場所は、きっときっと大切にしないといけ…

すごろくを作れば、の話。

世界すごろく、とは苦し紛れに名を付けましたが、 いざ考えてみると、案外いいネーミングでした。 すごろくを作っているのはあの人ではなく、 あたしだという決め事があるだけで。 コマを進めるのも、あたしの強い気持ちだったり、 隣の人が向かう先に気まぐ…

半音ずれたピアノの音色、の話。

半音ずれて聴こえるピアノの音色は、 あたしの頭のゆとりのなさから来ています。 頭の中を空洞にできず、はちきれんばかりに 中身が詰まりに詰まっているから、 ピアノの半音分だけ三半規管が動いてしまいました。 何度確かめるように弾いても 不協和音に聴…

好きなのではなく、の話。

気付きました、あたし。 あたしは あなたが好きなのではなく、 丸ごと あなたになりたいのです。

幻を本気で歴史に変える、の話。

あたしがあなただと思っていた人は、 どうやら まったくあなたではなくて、 あたしがあなただと思い込みたい誰かだったようでして、 でも そうなると、あたしが密かに心で温めていた あなたが好きなあたしの魅力、はもう行き場がなくなり、 呼吸もできずに窒…

両想いなのに片側想い、の話。

両想いなのに片側想い、という幾何学模様は存在します。 そして、その図柄を美しいと思い込みたいあたしこそが、 他でもない そのタペストリーを織る張本人だという事実も どこにも逃れられずに、絨毯のそばを舞う埃として存在しています。

肌にスイカ汁の染みを、の話。

あなたは掃除機のように様変わりし、 たくさんのサクランボをどんどん籠に集め、 あたしは その瞬間にいつも遭遇してしまうから。 その度に、 あたしが捧げた甘いスイカから したたる汁は、 あたしの肌にうっすらと染みを残していくけれど、 それを泣き跡、…

ジキル博士とハイド氏に覗かれる、の話。

今のあたしが大好きな人と 今のあたしが大嫌いな人、が ここを覗いてくれていることを想像してみる。 ジキル博士とハイド氏や 白黒なオセロの駒が教えてくれるように 一番の喜びを与えてくれる人は 一番の落ち込みも授けてくれるのだけれど、 それでも あた…