溶けてく体。

夕方、あたしの体が熱を発してることに気がついて。
相変わらず体の悪化を認めるのが遅い性分なのです。

久し振りの高熱、は すべての記憶の境界を溶かし、あたしを無に近づけていく。
今まで積み上げたものをあたしから奪っていこうとしているよう。
一見、美味しいスープをコトコト煮ている風景と錯覚させてしまうから、油断ならない。
あたしはうつらうつら、夢に片足を取られながら、やっとの思いでそのどろりとした記憶のひとかけらを手のひらに乗せた。

あいたいなあ。

ああ、まだ終わってなかったんだ。
何だかとても嬉しくなって、ひとすじの涙を流した後、あたしはその混沌に身を委ねることにした。

熱を出さなきゃ自分の気持ちが分からないようじゃ、体がいくつあっても足りないですなあ。
自分で気がついたことだけど、誰かにそう指摘されたことにしておこう。