めるみほしきなお芝居① 〜春にして君を想う〜

『春にして君を想う』


アイスランド旅行の支度として、鑑賞しました。

春にして君を想う [DVD]

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人生最後に見る景色ぐらい自分で決めたい。
そんな老人ゲイリとステラによるロードムービー
アイスランドの荘大な自然が、二人の道中を彩ります。
盗んだジープは壊れるし、二人が歩く姿に頼もしさはない。でも、かっこいい。


どんな人生でも最後に待ち受けているのは死である。
これほどまでにそのことをストレートに表した作品はあるのでしょうか。


言葉も少なく、シナリオは至ってシンプル。
ひとシーンひとシーンのつながりがするすると入らず、数分経ってから分かる感覚が新鮮で、その時間差が味わいの一つです。


印象的なシーンを一つ。
旅に出る前に、ゲイリがステラに新品のスニーカーを買ってあげる場面。
足元は妙に白く鮮やかで、ただ当のステラは残された体力を振り絞っての最後のひと旅。
そのアンバランスさが表現され、目に焼きつく印象的なシーンです。
また、旅立ちの時に行う「儀式」というのは人によって様々あるかと思いますが、「靴を新調する」というのは私なら最もしないことであると同時に、なぜだかとても共感してしまう「儀式」でした。


最後は『ベルリン天使の詩』からの引用シーンもあります。
この映画、お薦めされていて、あらすじ聞いただけで泣いてしまいそうなのですが、やはり見ないと。

ベルリン・天使の詩 デジタルニューマスター版 [DVD]

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涙は流れませんが、心に染み、胸が詰まる思いになります。
個人的には『パーフェクト・ワールド』を観た時と近い心境になりました。
この映画も中学の時に見ましたが、心の奥深くに宿り、忘れられない作品です。(今年、リマスター版が出てる!)

パーフェクト ワールド [DVD]

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余談ですが、小沢くんは同タイトルの曲を出しています。

偶然か故意か、彼が出した最後のシングルのようです。


二人の旅は冬に始まり、春に終わりを迎えます。
生と死が混在する季節に旅の幕は閉じ、自然の一部になるということは、自然に還ることで完結することを知るのでした。