外付けHDDさながらな生命力、の話。

今、何かの狭間にいる。
何と何の間か、は分からない。
ただ分かるのは、自分の周りに二種類の空気が入り混じっていること。
そして、そのことに気づいている時点で、
もう自分の身体は、新しい空気にしっくりし始めている、ということ。


何かの狭間にいると、
その両脇にあるはずのものが、途方もなく遠く感じる。


古くから包み込んでくれている空気は、既に食べつくした気分になり、
自分の体内なくせに、手が届かないような胃の裏側にへばりつきながら、
一瞬のうちに、ふわっと、胃から染み出た胃酸で蒸発していた。

新たに受け入れること自体を受け入れることがまず必要な、空気は、
接近されているからこその反発で、どんどん遠ざかっていく。
弾いても尚その相手を追い求める、その姿勢を参考にしたかったが、
そんなおはじきのはじきかた、はもう忘れてしまったようで、
過去の自分の一部が、ごっそり抜け落ちてしまった感覚だけが、甘く残る。


その内側への潜り込みと、外へ外へと重力に逆らう真逆の引力に、
たったひとつしかない身体は、引きちぎられそうになる。


何かと何かの間にいることは、そのこと自体に熱量が求められる。
体内からこみ上げてくる類ではない、外付けHDDさながらに、
即座に増すことが出来る生命力を装備することになるあまり、
借り物競争の品に近いであろう、自分の心身に最後まで馴染んではくれず、
ただただ、それを身体の輪郭の外側でもてあますことしか出来ない。


何かと何かの間は、三途の川のど真ん中。
先に進むことが渡りきったことになるのか、
川を越えない決意がそういう意味を持つことになるのか。
それは分からないし、どちらにも興味はない。


今は、この川のど真ん中の地点から、下へ潜り潜って、
寝るためのあなぐらを掘り、その中に身をひそませながら、
この厄介で一時的な生命力を、時の流れとかやらに、
思わず放り投げてしまいたくなるのを必死に堪えることで精一杯だ。