言葉はいつも想いが足りない、の話。

言葉はいつも想いが足りない。


「そんなに頼ってこないでよ」と
言葉はしかめっ面でこっちを見る。


どんなに限りなく相応しい表現を選んだって、
その容れ物には収まらないどろどろがいる。


でも、そのどろどろこそが、
一番伝えたい、届けたい、
無くてはならない部分なのに。


どんなことを伝えても、
どんな言葉を選んでも、
必ず取りこぼされるのは、
その一番大切などろどろであることは
ずっとずっと変わらない。


そのどろどろは誰にも届かず、
どこにも放たれることもなく、
あたしの内側でねずみ花火のようにうごめいては、
その命を終える日を、ただただ待っているだけ。



それでも救いがあるとしたら、そのこと自体は
世の中で最も美しいことのひとつだということ。


人はここから一歩も動かずにも、
誰に認められなくても、美しくいられるのだ。