切り刻まれた一瞬のかけらに、の話。
人との距離感がつかめず。うろたえる時の振動が、
足元の地盤を静かに揺るがしては表面を崩していく。
予期せぬかたちで声をかけてきては、
あたしの髪に手ぐしを一度だけ通し、
跡形もなく人混みに吸い込まれていったのはあなた。
取り残されたあたしの頭には、
あなたの手の感触がじんじんと残っている。
やがて手のぬくもりは消えてしまうだろうけど、
その分だけ、手触りの感覚を必死に思い出しては、
増長させた刺激で空洞を埋めてしまうのだろう。
どうして、それを望んでいなかったあたしの方が、
こんなにもその続きにそわそわしてしまうのか。
人との出逢いに期待を寄せていない分、
それが降りかかると、どんな小雨でも
ずぶ濡れになってしまうのです。