表現することを覚えたなら、の話。

 「明日、この村を出ることになったら、

 まずは、自分を表現するすべを身につけなさい。

 そうすれば、どんなに辛い出来事に遭遇しても、

 その辛さに苛まれながらも、このことを表現できたら、

 どんなに素晴らしいかと、わくわくすることを止められなくなる。

 自分の体内から、そのどろどろを吐き出し、手のひらに乗せ、

 眺めてみると、まるで他人の身にふりかかったもののように見えてくる。

 思わぬ事態は、非情にもあなたをいつどこでもつきまとってくるし、

 あなたの身体はちっぽけで、ひ弱なのだから、

 その身体を大事にしてあげるためにも、表現することを覚えなさい。」


 小説によく出てくる、こんなことを言ってくれるおばあちゃん。

 私はまだ出逢えていないから、目を閉じながら、こうつぶやきました。