夢の中で嗅覚を回復させる、の話。

明け方、こんな夢を見た。


そして、これは取り留めなく
ふらふらと綴られていきます。


あたしは戦時中の日本にいるようだ。
過去の人が加工した文書や映像からの
情報でしか知らない大戦のイメージ、が
夢の隅から隅まではこびる。


そんな実態のない虚無感漂う戦争の中で、
あたしはどうやら軍に所属している。


この夢はあたしの視点で映し出される。


あたし達15人ほどは戦車に乗る任務を任されていた。
その中で、あたしだけドイツ軍との共同車に
乗り込むように命じられる。
その指令が飛んだ時、周りは沈黙を破った。
ドイツ軍との戦車のスピードは異様な速さで、
何より自国軍だけが乗るわけではないので、
仲間割れが起き、その中で命を失った日本軍もいるのだ。


ただ、万が一の場合に備えた作戦であると告げられ、
夢の中だったとは言え、あたしは恐ろしくも
どうせ何も起きずに済むだろうとたかをくくっていた。


あたし達が待機していた場所は、
あなぐらのような土の色や質感を伴っていた。
今思い返すと、今年鑑賞した舞台『cocoon』
仄暗さに近いものを再現していたのかもしれない。


先ほどの通達を受けてからほどなく、
「Shit」と声を上げる女性リーダーの声が。
(ちなみに、15人の中で女性だと確認できたのは
 あたしとこのリーダーだけ。このリーダーは、
 現実の私の、高校時の歴史の先生だった
 カナダ人女性をモデルにしているのだと思う)


直ちに出動せよ、と命じられ、
夢の中の出来事なのに、
ベッドに横たわる自分の身体に
血の気が引く感覚や、
まさかという胸の動悸が
ありありと感じられた。


とは言え、それすらも穏やかなものであり、
それは、自分の反射神経の欠落からなのか、
あるいは、その感情に浸る時間もなく
出動しないといけなかったからなのか。


その先に起きたことは、
これまでの出来事よりも
あまり体感としては残っておらず。
その残り火の勢いのなさになぞらえ、
説明すると、あたしは何かの衝撃により
吹き飛ばされ、地面に叩き付けられ、
死んだかと思いきや、何とか一命を取り留め、
他の仲間たちも少しずつ見つかっていく。


仲間が全員帰還するのを待つことなく、
あたしは夢から脱出することとなった。



戦争にまつわる夢ははじめて見た。
これは暗示なのだろうか。
でも、私は夢の中で戦いもせず、
血も流さなければ、仲間も失わなかった。
敵が誰かも、目的も、何も分からない。


こういう領域に対する想像力が
あたしにもあるのだとはじめて知った。
もちろん昨今の安保関連の動きを
受けてのことではあるだろうが。


そして、あたしの腐った想像力は
何か、大きい何かが欠落したような
戦争イメージしか創りだせず、
更にその中でのあたしの態度も腐っていた。
でも、それはすべて目覚めてから気付いたこと。
夢の中では腐っているのに無臭だから見落としていた。


匂いがしないからと、夢の中で
そのことに気付けなかったのは愚かだけど
予感とか直観って嗅覚に頼っているのかも。


夢やイメージやシンボルにも
嗅覚が入り込む余地があるとしたら。
この夢はどんな匂いがしたのだろうか。
国会前のデモはどんな匂いがするのだろうか。
それらは混ざりあえる匂いなのだろうか。




ところで、『cocoon』の世界観には
影響されていたのか、いなかったのか。
あたしはあの中の少女たちに、
自己投影はしなかったらしい。
それよりも、30歳ほどの男性兵の
つい見てしまう、という感覚の方が
寄り添えてしまうのだった。