自分の身体を食べ尽くす、の話。

ぞくぞくするような気持ち悪さがたまらない快感を伴うのは、
身体の外側で延々と起きるめまぐるしい出来事より、
身体の内側に広がりゆく無限の世界で起きること。


自分の身体を自分で食べ尽くすことは、
世の中で一番大切にしていい行為なのに、
背徳感や裏切りの気持ちを持ちながら、
わざわざ人目につかないところまで赴き、
あたしはこっそり、それに勤しむ。


あたししか知らない入口から、その世界に潜り、
あたしにも分からない黒ずんだ迷路をさまよう。
時空間の感覚なんか奪われては目の前で引き裂かれ、
五感も鋭くなりすぎるあまり、急速に失ってしまう。


出口を探すことなんか、最初から放棄している。
でも、そのありかを知らないのは、あたしだけなのだ。

あたし以外の全てには、あたしのためだけにある出口が見えている。
でも、それは本当にあたしのためだけにしかない出口だし、
あたしにだって、あたし以外の全てのための出口なんか見えている。


それでもたまに、出口に辿り着けそうな香りを放つ
出口への出口、に遭遇する瞬間がある。
それは、とてもおそろしい。

その出口への出口は幻でしかないと分かっていても、
出口が見つかり、かくれんぼが終わってしまう可能性やら、
出口が理想とあまりにもかけ離れている可能性やらに怯え、
あたしはそのホログラムに、大げさなまでに着火する。


あたしはあたしに近付くたびに、
あたしを壊してはあたしを見失わせる。


そうやって、絶対に終わることのないかくれんぼ遊びが
確実に、永遠に、終わらないように、甘味が一滴も漏れないように、
ちょうちょ結びがほどけないように、きつく、ぎゅっと、しばる。