「案外、存在、と名付けてもいいな」、の話。

あなた、を想像するだけで。
普段はとろけそうで役立たずな あたしの輪郭は濃くなっていく。
あたしの肉体は空間のここからここまでを占めているのだと、
明確に指示された図面が脳内に投影される。


それは頼りなくちっぽけに見えることが多いけど、
時に「案外、存在、と名付けてもいいな」と
思うほどには、姿形を型取っていたりする。


あなたを想像する時、
そこに現れるのはあなたではなく、
どうやら あたしが登場するようです。


じゃあ、あなたを召喚する方法はと言えば、
あたしがなりたくてもなれない、
もはや全てが別人である魅力的なあたしを想像すると、
ようやくあたしは あなたの像を迎え入れることができて。


その女性の母性本能に操られるように開花される、
あたしの前では顔を出さない、少年のようなあなたを見届けながら
あたしはより一層、あたしの輪郭を強めていく快感を覚えるのです。