魂の甘焦げた汗、の話。

この小説は ひとたび読み始めたら、
最後まで読み通さないといけません。
途中で中断されることがありましたら、
また一から読み直してください。


その代わり、物語のどんな箇所にも
必要以上に足を止める必要もありません。
そこに書かれている出来事も話し言葉も、
そのまま心に招き入れてください。
そこに連なる言葉たちは詮索を拒み、
他の何かと結ばれることを望んでいません。
それはまるで この物語の世界そのもの。


このお話は他の小説と比べても、
脳内の映写機を活発に刺激するようで、
あたしの視野を遥かに超える
360°の絵画をもたらします。
その風景や人物の顔は、
西瓜糖の汁がしたたるレンズ越しのせいか、
どこもかしこも、誰もかれもが、
霧に包まれているのです。


そして、その世界の中に、
あたしの居場所を発見する日もあります。
そんな場所が見つからない時もあります。
どちらも本当の答えですから、
あたしはその感覚にそのまま頷きます。


この箱庭で流れゆく血と西瓜汁が混ざった液体。
涙にも愛液にも変わる、あたしの大切な水分。
そして、それ以上の熱量に匹敵する
あたしを生かす魂が吐き出す甘焦げた汗のもと。


『西瓜糖の日々』さんへ