もやもやを持てないもやもや、の話。
あなたという小説に登場する
ルーシーという娘さんは、
南アフリカのアパルトヘイト廃止直後を
たくましく生きる女性だけれど、
その姿を、あたしは
あたしが望んで立ち寄る街の一角で
よく見かけたことがあるような気がしています。
その彼女は「善い人」を目指すよう言い残しました。
ルーシーの父親は、ルーシーとは違う
ルーシーとは異なるタイプの同年代のメラニーに
身も心も奪われたのか、奪われることに全身全霊をかけたのか、
いずれにせよ、恋に落ちていきました。
そして、そのことに誇りを持っていました。
あたしは、そのことに嫌悪ももやもやも持てず、
その心の行き場のなさに、激しくもやもやしているのです。
あたしがあなたの紙を深く指で絡み取るには、
あたしはルーシーなのかメラニーなのか、
きちんと知ることが必要なのでしょうか。
ルーシーでありながらメラニーになりたいあたしは、
ルーシーの父親からすら相手にされないのかもしれません。
* 『恥辱』さんへ
(南アフリカ)