2017-01-01から1年間の記事一覧

何も身に着けずに、の話。

作品と向き合った時の気持ちを記すこと。 どういうわけだか、ここにはそぐわないようで。 他の壁には落書きできるのに、 ここにいる間はなかなか書こうとしないようで。 ここに来た時には、 あたしは手ぶらでいたいようです。 ここに来た時は、身軽でいたい…

街中で見つける後ろ姿が、の話。

あたしに、あたしの後ろ姿が見えたとしたら、 そのあたしを追いかけたいと思うでしょうか。

首のかしげを火で温めれば、の話。

去年が終わろうとしていた頃、 あたしの身体が命を宿らせたいと 何の前触れもなく訴えかけてきた。 あれは国道だと意識したことがない、 大きな道にかかる歩道橋の上。 突然こぼれる涙をただ受け入れながら。 どうしてガソリンスタンドから 嫌な油の臭いは漂…

頭の中ががらりと、の話。

ここに来ると、 話す言葉も書く言葉も様変わりする。 直前の直前まで、頭を埋め尽くしていた文字の並びは 全くもって違ったというのに。 そんなふうに一瞬にして、 あたしを取り巻く風のにおいを変えてしまう。 この場所は、きっときっと大切にしないといけ…

ハロー、世界、の話。

最近、ふたたび開始したのは、 本を読みながら世界を巡ろうという計画。 今回は、南アフリカかオーストラリア、 いずれにしても南半球から始めようと。 でも、最後の最後までどちらにしようか決められず、 南アフリカ出身で現在オーストラリアに住んでいる作…

すごろくを作れば、の話。

世界すごろく、とは苦し紛れに名を付けましたが、 いざ考えてみると、案外いいネーミングでした。 すごろくを作っているのはあの人ではなく、 あたしだという決め事があるだけで。 コマを進めるのも、あたしの強い気持ちだったり、 隣の人が向かう先に気まぐ…

もやもやを持てないもやもや、の話。

あなたという小説に登場する ルーシーという娘さんは、 南アフリカのアパルトヘイト廃止直後を たくましく生きる女性だけれど、 その姿を、あたしは あたしが望んで立ち寄る街の一角で よく見かけたことがあるような気がしています。 その彼女は「善い人」を…

文学論をひとり遊び、の話。

小説家である著者が生み出した架空の小説家が、 作品の中で意気揚々と、著者本人が普段口にする 文学論や作家論を登場人物相手に戦わせる。 という劇を著者がひとりで演じ分けているのです。 そういうひとり遊びの楽しさを あたしも少しばかり知っている気が…

半音ずれたピアノの音色、の話。

半音ずれて聴こえるピアノの音色は、 あたしの頭のゆとりのなさから来ています。 頭の中を空洞にできず、はちきれんばかりに 中身が詰まりに詰まっているから、 ピアノの半音分だけ三半規管が動いてしまいました。 何度確かめるように弾いても 不協和音に聴…

好きなのではなく、の話。

気付きました、あたし。 あたしは あなたが好きなのではなく、 丸ごと あなたになりたいのです。

すべては もうあたし側で、の話。

あたしの身体は、 あまりにもその世界に溶け込み、 そこで起こる出来事に何ひとつ疑問を持ちません。 あたしは あたしの境界線を保つのが下手ですから、 虎が算数の宿題をお手伝いしても、 片耳を切った男性が同じ耳を切ろうとした時に、 刃が通った感触がな…

3つのまたしても、の話。

またしても、またしても、あたしは綴る。 あの子が必ず踏んでしまう橋の板は、 あたしが その世界で必ず遭遇してしまう 淡い桃色づいた透明なバンビと同じ柄をしている。 だから、あたしも必ずその板を踏むでしょう。 あの子は あたしじゃないけれど、あたし…

魂の甘焦げた汗、の話。

この小説は ひとたび読み始めたら、 最後まで読み通さないといけません。 途中で中断されることがありましたら、 また一から読み直してください。 その代わり、物語のどんな箇所にも 必要以上に足を止める必要もありません。 そこに書かれている出来事も話し…

幻を本気で歴史に変える、の話。

あたしがあなただと思っていた人は、 どうやら まったくあなたではなくて、 あたしがあなただと思い込みたい誰かだったようでして、 でも そうなると、あたしが密かに心で温めていた あなたが好きなあたしの魅力、はもう行き場がなくなり、 呼吸もできずに窒…

両想いなのに片側想い、の話。

両想いなのに片側想い、という幾何学模様は存在します。 そして、その図柄を美しいと思い込みたいあたしこそが、 他でもない そのタペストリーを織る張本人だという事実も どこにも逃れられずに、絨毯のそばを舞う埃として存在しています。

肌にスイカ汁の染みを、の話。

あなたは掃除機のように様変わりし、 たくさんのサクランボをどんどん籠に集め、 あたしは その瞬間にいつも遭遇してしまうから。 その度に、 あたしが捧げた甘いスイカから したたる汁は、 あたしの肌にうっすらと染みを残していくけれど、 それを泣き跡、…

3という数字は大きいのか小さいのか、の話。

3、という数字は大きいのか小さいのかについて、 いつまでも答えを決めずに悩んでいたいから、 それを百遍でも試し続けるのです。 一文字の漢字の契りのもと、時代も国籍も越えて、 身を寄せ合いながら並べられる名前たちと物語たち。 あまり見かけたことが…

ジキル博士とハイド氏に覗かれる、の話。

今のあたしが大好きな人と 今のあたしが大嫌いな人、が ここを覗いてくれていることを想像してみる。 ジキル博士とハイド氏や 白黒なオセロの駒が教えてくれるように 一番の喜びを与えてくれる人は 一番の落ち込みも授けてくれるのだけれど、 それでも あた…

図々しい背伸び、の話。

ひらがなを一文字一文字並べていく。 音符を一つ一つ連ねるように。 ただそれだけで、あたしは 世の中に起きるあらゆる絶望に ふわっとしたときめきを添えられる。 そんな図々しい背伸びをしています。

とにかく止まらないスイカの種、の話。

あたしがあたしを許す、という受け入れは、 他のどんな包み込みよりも生温かく、 極上の心地よさを飛ばしてくるから。 ひとたび こじ開けた出口の先端では あたしのめるみほしきさが たまらず疼き、 決して速くはないけれど、とにかく止まらずに あたしにあ…

無重力に放り投げるおまじない、の話。

あなたの魔法は、あたしを揺さぶり、 あたしがあたしでいるために、それだけでなく、 あたしがあなたを大切にするために大事にしている欠片たちを 無造作に四方八方に散乱させ、 あたしからあたしをどんどん引き離していく。 その重力の逆らいは、あたしのこ…

あなた、から始まる文章でしか、の話。

あなた、から始まる文章でしか 世界を切り開けないあたしなのだけど。 こんなことも言ってみる。 あたしに会いたくなったら、ここに来てほしい。 あたしよりも、あたしらしいあたしが、ここには いる。 あなたの視力がしおれてしまうぐらいに、 ここの世界を…

まだ指揮者にはなれなくて、の話。

さみあもにょるは、もうガラクタ箱に入れたのだよ、と あたしの口の左側の喉奥から聞こえてきた 過去のぼやきは、腹話術のいたずらだったのか。 最近は あたしの中の めるみほしきな感覚が、 ひょんな刺激を受けても再現されるようになりました。 とある宣告…

「案外、存在、と名付けてもいいな」、の話。

あなた、を想像するだけで。 普段はとろけそうで役立たずな あたしの輪郭は濃くなっていく。 あたしの肉体は空間のここからここまでを占めているのだと、 明確に指示された図面が脳内に投影される。 それは頼りなくちっぽけに見えることが多いけど、 時に「…

甘ったるい甘ったるさ、の話。

目を閉じながら、とことこ歩いていたら、 どういうわけか、ここに辿り着いていたのだけれど、 ここに残しておきたい落書きの中身は、 その道中に落としてきたみたいです。 何も書かなかった、という覚え書き。 を綴った後に、ふと気付いたのは、 あたしが求…

研究論文の後書き、の話。

あなたが あまりにも楽しそうにしているから、 あたしはあなたの研究に励みました。 脳内に専用のラボを用意し、 あなたを顕微鏡から望遠鏡まで使って観察しては、 限りなくあなたに近づける生活リズムを譜面に起こし、 来る日も来る日も、その楽譜を元にタ…

ハムスターをお手本に、の話。

毎度訪れる沼地を歩くような日々の終わりが見え始めたのか、 あたしは今回もまた、今日という日まで流れ着いた。 結局、こうやってあたしの鼓動がまだ動いていることを 確認できる日が来るのを待ちわびたり、あるいは、 心臓が止まってしまう不安に襲われな…

トッピングを添えた建設工事、の話。

いつか、好きな人を、 モニター越しに、スクリーン越しに、 液晶パネル越しに、水槽越しに。 一枚、の反対側から見守りたい。 その一枚があるだけで、 あなたは あたしにそわそわして、 鋭く挑発的な刺激と認めてくれる。 肝心なのは、向こう側の何かではな…

キャスティングすら、の話。

覚悟を決めないと、キャスティングすらしてもらえない。 どんなセリフを口にすればいいかも分からない。 それは夢追い人、という役だとしても。 ゼロという点を打つ勇気、については、 ここにいる人は全員、熟知しているようだった。 あなたたちには、そんな…

約束は、の話。

約束は覚えられている限り、続くもので、 人が何かを忘れてしまうことは 責められることではないから、 覚える、なんて能力は特に役に立たなくて、 もし いいことがあるとしても、 それは約束した相手が喜ぶ何かであって、 自分を慰めることには繋がらないで…